コエンザイムQ10とは、私たちが生きていくエネルギーを生み出すために欠かせない補酵素のひとつ。肉類や魚介類、野菜にも自然に含まれている成分です。もちろん、私たち人間の体内でも作られています。別名を「ユビキノン」と言うのは、「生物界に広く分布するキノン類」という意味だそうです。
最初に発見したのは1957年、ウィスコンシン大学の付属酵素研究所でした。
ミトコンドリアの内膜や原核生物といった細胞膜に存在し、電子伝達系を構成する成分のひとつであることが分かったのです。
私たちの体のすべての細胞ひとつひとつに、コエンザイムQ10が存在しているんですね。それは、体にとってなくてはならない成分だということを証明しています。体を動かす原動力になっているし、体の健康を維持していくために大きな役割を果たしていると考えられています。
ただし、年齢を重ねるとともに、体内のコエンザイムQ10の量が徐々に減っていくということも分かっています。
体内のコエンザイムQ10の量を年齢別に計測した資料を見ると・・・
20歳のときの量を100%とすると、80歳のときには、肺は65%に、心臓は43%にまで減ってしまうそうです。
コエンザイムQ10は、生物が生きていくためのエネルギーを作ることと、活性酸素を除去することという大切な働きをしています。
コエンザイムQ10はミトコンドリアの電子伝達系で電子の受け渡しに関わる「補酵素」として働いています。ATP(アデノシン三リン酸)を生み出すのに欠かせない存在で、ATP合成の効率を上げてくれるんですね。これを「ミトコンドリア賦活効果」などとも呼んでいます。
ATPというのは、呼吸をしたり、心臓を動かしたり、体全体を動かすためのすべての原動力になっている大切な物質。私たちが生きていくために必要なエネルギーはすべてATPによって生み出されているといっても良いでしょう。
そのATPを作り出すのにとても重要な役割を果たしているのが、コエンザイムQ10なんです。
コエンザイムQ10のもう一つの特長は、強い抗酸化作用があること。抗酸化物質として、ビタミンEと一緒になって働くと考えられています。
ちょっとムズかしい話ですが、詳しく説明すると・・・
私たちの体が運動や疲労といったような酸化ストレスにさらされると、体内に活性酸素が発生します。これを還元型CoQ10(コエンザイムQ10:ユビキノール)が還元してビタミンEに再生します。自身は酸化型CoQ10となり、血流に乗って肝臓で吸収されます。その後、再び還元型CoQ10となって体内を巡るのです。
活性酸素が除去されると、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞といった成人病の予防だけでなく、慢性疲労の改善や、体全体の老化防止に役立つことが分かっています。
現在、コエンザイムQ10は医薬品ではなく食品のカテゴリーに入っているので、サプリメントの『効能』というものははっきりと言えない(分からない)、というのが正解です。
ただし、様々な研究機関がコエンザイムQ10サプリメントとプラセボ(偽薬)を使った比較試験を実際に行っていて、その結果が公表されていますので、その中から私が気になったものをいくつか紹介したいと思います。
慢性疲労症候群と診断された方を対象に、還元型コエンザイムQ10を3か月間摂取してもらった結果、疲労・睡眠・うつ状態といった自覚的な症状が改善し、自律神経機能の改善効果が見られたという報告があります。
また、他の試験でも、身体的疲労の度合いを測るために唾液SlgA分泌速度の変化を調べたところ、コエンザイムQ10を2ヵ月間摂取した後とする前とでは、2倍以上の変化が見られたという報告がありました。
コエンザイムQ10を1年間継続摂取した結果、社会生活機能、日常役割機能、心の健康、活力など、主に精神系のQOLスコアに改善が見られたという報告があります。QOLとは「Quality of Life」のこと。高齢化が進む時代に、毎日の生活の質が向上するというのは、すごく大きなメリットだと思います。
コエンザイムQ10は、私たちの体の中で合成し、作り出すことが可能な物質です。でも、そのほとんどは食べ物に由来すると言われています。
このような状態になると、コエンザイムQ10を食べ物からだけ採ることは難しいようで、意識的に補う必要性が指摘されるようになりました。
現在市販されているコエンザイムQ10は医薬品ではなく、健康食品です。あくまでも食品ですから、このような人は飲んではいけないとか、副作用がある、ということは報告されていません。 ただ、一般の食品と同じように、たくさん摂りすぎると肝障害などが出ることが分かっています。これは、どんなサプリメントにもいえることですが、持病があったり、妊娠中だったりする方は、かかりつけ医に相談してから利用することをおすすめします。
一般的に、健康な方を対象とした場合にはコエンザイムQ10を1日に300mg、4週間の摂取なら安全と評価されています。1日に100~120mg、2年間摂取した場合にも問題はなかったという報告もあります。
これらのことから、コエンザイムQ10は、他のサプリメントと比べると比較的、副作用が出にくく、安全性は高いと考えられています。ただし、利用方法や利用する方の体調によっては絶対に安全ともいえないので、心配な場合にはかかりつけ医に相談することが大事かと思います。
医療用の医薬品として使われていた時代には、酸化型コエンザイムQ10しかなかったそうです。酸化型のCoQ10は経口摂取された後、小腸で吸収され体内の血流を巡り、肝臓に入ります。そこで変換されて還元型CoQ10となり、再び血液中に放出され体の中を巡るようになります。
しかし、年齢を重ねるとともに、体内で還元型に変換させる力が衰えてしまうので、せっかく摂取しても役に立たないことも多いのではないかと指摘されていました。
2007年に、画期的なできごとが起こりました。国内の素材メーカーが還元型のコエンザイムQ10の製造に成功したのです。最初から還元型をしているので、体内で変換させる必要がなく、摂取した分をそのまま有効に使えると注目を集めました。
実は体内では還元型CoQ10のみが利用されるため、健康な方の血液中のCoQ10のほぼ95%が還元型の状態で維持されているのだそうです。
CoQ10は体内でも生合成されている成分。でも、生合成する能力は20歳をピークにして少しずつ衰えていきます。魚類や肉類、野菜にも含まれているので、食事から摂取することも可能ですが、バランスの取れた食事をすることが難しい方にとっては十分な量が確保されているのか、心配になることも多いかと思います。
CoQ10サプリメントは比較的安全性が高く、素材としても安定供給されているため、ドラッグストアやヘルスケアショップで簡単に購入することができます。
どちらかというと、酸化型の方がリーズナブルに購入できるというメリットがあります。一方、体内に吸収されたあと、無駄なく働いてくれることを考えると還元型の方にメリットがあると言えます。市場の動向からすると、還元型CoQ10の方が多く流通しているようで、それは需要があるからと言うことになるかと思います。