L-テアニン(以下テアニン)は、お茶に含まれるアミノ酸の一種で旨味成分とも言われ、高級なお茶や新茶に多く含まれています。
古くから日本で飲まれているお茶の原料になる「茶の木(学名 カメリア シネンシス)」という植物の根っこのところで作られ、その他にマッシュルーム(担子菌類)からもテアニンの存在が確認されておりますが、他の植物では見られないめずらしい成分です。
テアニンは、リラックス効果があるとされ、その働きが注目されています。
高級なお茶に含まれる成分
テアニン
テアニンは、日本では1964年に食品添加物として指定されており、グルタミン酸のエチルアミド誘導体となります。グルタミン酸もアミノ酸であり体内で生成可能な成分で生体内では重要な働きをしています。
茶の木の根で生成されたテアニンは植物の幹を通じて茶の葉へ送られます。
葉っぱに送られたテアニン(うまみ成分)は太陽光に照らされる事でカテキンという渋い成分に変化致します。その為、玉露のような高級な茶をつくる際は、茶の木に太陽の光が当たらないようにして育て、テアニンのままの状態で玉露の原料が作られます。
テアニンの効果と副作用
旨味成分であるテアニンのもっとも有名な効果としては「睡眠の質の向上」になりますが、その他にも以下のような効果がある事が確認されています。
・リラックス効果
・冷え性の改善
(手足の末梢血管が拡張され血流が改善する)
・更年期障害の改善
(ホルモンバランスの乱れによる不快感の軽減)
・目覚めの快適さ
・ストレスの解消
・集中力を高める
・血圧を低下させる作用
(ノルエピネフリンの放出を抑制)
テアニン摂取においては特に副作用となるような情報は見つかりませんでしたが作用を考えた副作用としては、例えば血圧を下げる治療薬を使っている方は、テアニン摂取により過剰に血圧が下がる事になるため、そういった注意は必要となります。
また、テアニンを摂取する事でお昼でも眠くなってしまう?という事を考えるかも知れませんがそういった副作用はございません。
逆にストレスが解消され、脳がリラックスした状態になり、集中力もアップするため仕事のやる気アップにも繋がります。
※太陽光にあたって変化するカテキンも有害なものではなく、抗酸化作用、抗炎症作用があるため、お茶の渋味成分カテキンに変化したとしてもヒトには有益な成分となります。
テアニンが睡眠を
サポートする仕組み
ヒトがテアニンを摂取すると体内に吸収され、やがて血流を通して脳へも運ばれます。
脳に運ばれたテアニンは、脳や脊髄にあり抑制性の神経伝達物質であるGABA(興奮や緊張、ストレスを抑える物質)や、同様に抑制性の神経伝達物質グリシンの増加を促進します。また、逆に興奮性に作用する神経伝達物質であるグルタメート(グルタミン酸)やアスパラギン酸の働きを阻害し興奮性を抑えてくれます。
脳内にGABAやグリシンが増加し、グルタメート(グルタミン酸)、アスパラギン酸の活動が阻害されると気持ちが穏やかになり、このまま眠る事で睡眠の質の向上に繋がります。または、不足すると「うつ症状」が発生すると言われるセロトニンの分泌も促進します。
さらに、ストレスを感じた時に発生する神経伝達物質ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の放出量を抑え、幸福感をアップさせるドーパミンの増加も促進してくれます。
かなり簡略的な説明ですが、このように
テアニンには興奮を司る交感神経を抑え、リラックス時に活発に活動する副交換神経にも作用するため、有益な自律神経活動へ通じて睡眠の質の向上に作用する事が確認されております。各種論文ではその効果を発揮するには就寝の30分~1時間前に200mgほど摂取すると良いとされています。
ストレスで寝れない方は
心理的・生理的な不眠症と言われる精神的整理不眠症を引き起こすストレスによって寝不足になりがちな方は、サプリメントを使ってテアニンを効率よく摂取してみては如何でしょうか。
※あくまでもサプリメントですので睡眠薬とも違い、不眠に関する疾病が改善するものでもありません。テアニンの効果としては、あくまでも健康的な日本人の成人男性および更年女性を対象とした臨床試験での睡眠の質の改善データであり、その他さまざまな研究レビューの一例となります。
ちょっとしたストレスによりなかなか寝付けない方や、ついつい考え事が多かったりして寝付きが悪い方は、是非テアニンを摂取して、リラックスした状態での睡眠をお試下さい。
補足:寝る前にテアニンが多く含有されている玉露などの高級なお茶を飲むと、リラックスして眠れるのか?という事を考えるかも知れませんが、お茶で効果を出すには相当な量が必要となりますし、お茶は利尿作用もあるので、睡眠中の妨げになりますね。
参考文献
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著者:大名町スキンクリニック 院長 橋本 慎太郎
金沢大学医学部卒、美容皮膚科クリニックを運営
https://m-beauty.jp/about/dr.html
参考文献やインターネット上にあるエビデンスやメーカー情報を元に分かりやすくまとめたものになります。参考になれば幸いです。